暮らし

『旦那のお墓に入りたくない』の行間よんでみた

男友達の中に
「老後は実家に戻りたいけど嫁が快く思ってない。お墓もあるし戻りたいんだよな…」
といった人がちらほらいます。

以前テレビで、
『旦那のお墓に入りたくない。実家のお墓に入りたい。』
『旦那と同じお墓に入りたいけど、会ったこともない知らない旦那の先祖と一緒はイヤ。』

といった人が増えているリポートされていました。
これは若い女性に多いだけではなく、4,50代の人も見受けられました。

これって、どういった現象なのでしょうか。

現在、自分のお墓が無縁化すると思っている人は半数におよぶそうです。

日本のお墓の流れ

本家のお墓に行ったことがある人は沢山の小さな墓石を見たことがあるかと思います。
当初日本は1人に1基、仏塔としてのお墓でした。
明治時代の家制度の導入により、一家に一基(家の継承を重視)になりました。
 →家墓、代々墓となり、仏塔としてのお墓は形骸化

今日では、家制度が崩壊し核家族化、少子化が進みお墓も家族墓、夫婦墓、両家墓、個人墓、永代供養墓など、急速に多様化しています。

家制度の崩壊

墓を守っていく上で、重要な役割を果たしてきた”家制度の崩壊”

宗教学者 山折哲雄氏
これは戦前からずっと日本人の宗教の一つの中心となしていたのは、「家の宗教」としての先祖崇拝でした。
これが崩れはじめた結果とも言えるかもしません。
それは魂の行方を信じることができない。現代人がそうですね。私もそうだ。
誰も思わなくなってしまったとすれば、自分の死後の問題をどうするか。葬儀の問題をどうするかという問題に直面しているということです。
ある意味ではジレンマの時期に差しかかっていると思います。

人口の流動化と少子化

人口が流動化し、生まれ育った場所と仕事を持ち長い間生活をする場所の違い。
都市部でも地方でも同じ現象です。

墓終いをする墓石の中に新しいものも多くあります。
→10年前に建てられたお墓でも、その地に誰も住んでいなければ継承できなくなってしまう。
→少子化のため、そもそもお墓を継承する人がいない。

核家族化と高寿命

長生きをすれば、自分の死後、自分のことを知っていた人がこの世に生きている年数が非常に短い。

2012年女性死亡者数のうち、80歳以上は7割

例えば”90歳で亡くなった人の23回忌を誰がするか” といった問題があります。
計算上では、子供も亡くなり、孫がすることになります。

3世帯同居の割合は15.3% (厚生労働省2012年)
→祖母に会うのは年に1,2回
→祖母が亡くなり、23年後に孫は法事やお墓参りをすることは考えにくい。

先祖(お墓)に対する考え方

「先祖」に対する考え方の変化

現代人の「先祖」とは”自分が生まれたときから知っている人”を指す。

「先祖」辞書では
1 家系の初代。祖先。
2 その家系に属した過去の人々。祖先。

と記されていいますが、辞書的な意味合いで捉えている人が少ない。
この記事の冒頭に記載した既婚女性たちの気持ちは、この捉え方からきていると考えられます。

既婚女性にとっての「先祖」への変化
・家制度が成り立っていた時代…夫の先祖
・現在…夫の祖父母、自分自身の祖父母
自分にとっての先祖は近親者を指すことが多くなってきています。
「◯◯家の墓」と、現代人の気持ちが合わなくなってきている。
昔は3世代同居して、先祖の話を聞くこともあったが、核家族になりそれがなくなってしまったのが要因と思われます。

なぜ、現代でも墓参りを国民的行事として定着しているのか

先祖に会いに行っているわけではなく、特定の故人に会いに行っている。
先祖祭祀でなく、故人祭祀に移行してきている。

自分にとっての親しい人が亡くなった場合には、多くの人は死んだ人が見守ってくれていると感覚が強いですからお墓に行って話かけたりとか、手を合わせたり、といったことは今なお続いています。

お寺にもよると思いますが、
お墓って、もともと先祖代々の全て納骨されてきるわけではなく、数親等までと決められています。
世代が変わるとお骨を抜き、共同供養へ移されます。

とどのつまり

お墓は、残された人がいないと意味がなく、残された人のためのもの。

お墓は、骨をおさめた場所でもありますが、亡くなった人と対話をする場所でもあります。

こんなお話もありました。
子供たちに迷惑をかけたくないからと海へ散骨をしました。
しかし子供たちは「どこに手を合わせたらいいのかわからない」と、毎年数万円かけて船をチャーターし散骨した地点までお参りをしています。とても大変です。
残された人は、死者と対話する場所がやっぱりほしいものであると感じます。

・死者を忘れないためのもの
・亡くなった人が残された人を見守れる存在
・残された人が自分を守ってくれる存在

『旦那のお墓に入りたくない』この言葉は、本来のお墓の形式から外れたものではありませんでした。
根本的な思いは変わっておらず見守って見守られるためのものでありつづけたい気持ちからと読み解きます。

墓じまい~人の終わり方の未来について~

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